「五感に鈴蘭」





 雨が目覚めるにおいに
 くるぶしを擽る春風に
 あなたの笑顔が映える

 奥の方で根差したまま
 離してくれないその手

 しろくて、かわいい、
 忘れられない毒の花弁



 暮れてゆく思い出は未だ
 舌を遊ぶ蜜に溶けていますか

 綺麗なままのあなたの代わりに
 焦げ付いたこころを忘れないで



 ふと揺れた先で夢をみる
 残り香があの日の胸を刺す

 やさしい鈴の音だけは
 いつまでも聞けないのに

 わたしは微笑んでいた





 20090424