「はなみずきと涙」





 夜のひとしずくを
 あたたかい水面に落として
 わたしは月を待っている

 空へ戻れなくたって
 とけてゆける場所があるなら
 もう木の葉も啼かなくていい

 優しくなれる温度で
 どこまでもぬるまる
 消え去れはしなくても
 一日を吸い込んで眠れる



 あたらしい歌はいつだって
 ほの白い腕で微笑っていて

 ひめごとの種子は満ち足りて
 月明かり差す水底で目を閉じた



 ただしい、は知らないけれど
 間違いじゃない、今なら云えるから





 20090513