「願いは所詮」





 記憶を幻視した夕空

 二匹の秋茜が迷う

 かなしいことを全て
 指の腹で押し延べて
 夜を思い出す前に
 溶かしてしまいたくて



 恋心を自覚した藍空

 二匹の秋茜が迷う

 星は死んだと君は云い
 星ではなかったと私は云い
 懐かしい風の匂いだけ
 それだけが正しいのだと知り



 変わらないものはない

 秋茜の迷う空と
 夏の暮れを報せる風と

 君のいないこの場所で
 静かに夢が醒めた気がする





 20090825