「白雪」





 透きとおった空から
 目には見えない花が降る



 甘い嘘を舌で隠して
 きみの体内へ渡した

 その嘘が芽吹いても
 花が強く香っても
 どうか白いままでいてね
 殻のにおいをさせていてね



 香らない夢をかかえて
 溶けるために生まれてくる



 肺を染めようと息を吸った
 胚も染めようと息を止めた

 きみにあげた嘘にはもう
 届かないだろうとしても

 せめてこれから強く香る

 ぼくのこころを白雪に





 再録