「隔たり」
ぼくときみとで祈られる
指をからめる儀式のなか
合わせたはずのてのひらで
たしかに風が笑っていた
まるで埋め合わせのように
唇は温度を分け与えてゆく
舌がよろこびを味わう
そうやって繰り返すうち
たとえば夢まで喰らいつくしても
鼓膜は震えてしまうだろう
隔たりをくすぐる隙間風は
きみの吐息なのかもしれない
怯えきれないやさしさに
ぼくは恋をしている
再録
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