「五月晴れ」





 淡い桃色の季節は駆け足で
 せつなさと手をつないで消えてった

 代わりと言っちゃなんだけどって
 木漏れ日にやさしさをもらって
 ぼくは夏の寝息を聞いた

 あのころ背伸びした高さまで
 今ならもう触れられるのかな
 桜の若葉に訊いてみる

 いつか忘れた夢の景色を
 ほんとの瞳で確かめられるのかな
 若葉は黙って空を見ている



 箒雲の青いところへ
 手向ける口笛は頼りなくて
 やっぱり小さなままのぼくを
 水溜りが映して笑ってた



 壊れてしまった傘と
 願いながら植えた苗木と
 いくつものビー玉を抱えて
 ぼくは夏の寝息と歌うから

 明日もまた晴れるといい





 再録