「ほんとは知ってる、泣かないために」





 体温をなくしてゆく今日
 光の代わりは藍と緋の境界線



 今さら夢みても
 羊の柵にさえ届かないのに
 夢できみをつかまえて
 ぼくは何を言いたかったのかな

(ぼくはきっと明日もここで
 屁理屈を吐いてはかたちにする)

 どこまでだって遠くを愛せる
 その つよくて不器用な腕で
 誰も知り得ない重なりの先を
 きみはいつも抱き締めていた

(ぼくがあげた新しいジョウロで
 きみは明日の分の虹をつくる)



 ジョウロはぼくがあげたもの
 そのことだけが嬉しくて

 ぼくにくれた「ありがとう」さえ
 きみはもう忘れているのにね



 夜をつくりはじめた境界線が
 交差することのない僕らを笑うよ

 きみには聞こえやしないだろうから
 ぼくも一緒になって笑うんだよ





 20090924