「さなぎ」





 あまくない世界にさらされて
 くちびるが諦めの音をこぼす
 乾いた歌しか知らないのに
 わたしの中身を買い被るのね

 うつくしくない上辺だけを見て
 幼さがかわいいと云うのなら
 おなじ類の顔で笑ってあげる
 綺麗につくろうのは得意なの



 うすい皮膚を隔てていても
 温度はつながってしまうから
 生きている心が目を覚ます

 不器用な指先に探り当てられ
 鼓動がまるで痛みのようで
 泣きながら恋をしていたわ



 優しい声で呼ばないで
 気紛れに鳴る雨音でしょう
 臆病に伏したこのからだが
 あなたを求めてしまうから

 暖かい掌で触れないで
 まだ春は遠いというのに
 期待で創られた瞳にもし
 あなたの姿が映らないなら



 恋を乞うから羽化を待って
 こわれそうなさなぎの中で
 こわれたくないから今はまだ
 お互いに夢を見ていましょうよ





 20091030