「銀色の距離」





 麻の種を胎に芽吹かせた
 甘い声から毒の香りがする

 息衝く億のあやまちで
 犯されたのはどちらだろう

 溶けた常識が耳を焼いて
 心臓の裏までくすぐる頃
 ようやく獏に見つかって
 銀色の距離が目を覚ますよ



 君はずるい

 正しいことばかり並べておいて
 終わりを突然告げるくせに
 どうして悪夢に僕を誘うの

 悲しいことばかり吐き出すから
 ほんとはこんなに弱いくせに
 僕はまた手を差し伸べてしまう



 足先まで根が伸びてきた
 爪の隙間から毒の色が見える

 あと少しだけ床を片付けて
 銀色の距離を食べさせて

 獏の来ない夢に連れていって





 20091103