「電気ブラン」





 あなたのために、と
 舌足らずな科白で飾った
 あまりにも閉じた世界で

 比べられない不等号は
 ゆっくりと交差してゆく
 まぼろしが生まれる

 覚えていてね
 赤い色の晩酌が
 肌に染みを残したこと

 切れた鍵盤の糸を
 無表情な指でむすんで
 夜は帰ってしまうけれど

 いちどだけ琥珀へ歌を
 想いなんて知らない

 アナタノタメニ、
 私たちは酔ったままでいい





 20091104