「さいごの種」





 語らないで往こう、

 そう決めた種を
 かかとの後ろに埋める

 緑の色を知れないまま
 やがて夜と出逢うだろう
 こぼれる光年先のまぼろしに
 かつて手向けた幸せを悼むだろう



 長い雨は止んでしまった

 還る水を透かして仰ぐ
 陽も陰も未だ着かない先は
 きっと違う芽吹きを待っている



 語らないで往こう、

 知れない緑を嘆かずに
 ただただ、青へ、





 20091209