「栞」





 声音からは嘘のにおいがするのに
 こぼれて落ちたことばは汚れているのに

 今日 また思い出へと変わるすべてを
 ぼくが捨てたものをきみは受け入れて

 インクの爪痕すら知らないページに
 いとしくいとしく植えてゆく



 装丁を違えたときから
 分かってはいたのだけれど
 ぼくはもううつくしくは成れない

 ほんとうは同じに在りたかった

 今は 塩辛い染みでふやけたのどに
 きみのことばが煩くかがやいている





 20100114