「君便り」





 残るものが嫌いだと言いながら
 君は便りをしたためている

 瞼の裏に時折あの日を見ながら
 静かにペンを走らせている

 どうしてなのかと尋ねたら
 今年の春によく似た笑顔で
 「なんだか泣きたい日もあるの」



 残るものが嫌いな君のことだ
 すぐに捨ててしまうのだろうけれど

 今はまだ

 机の上で白い封筒が
 乾いて拭えなくなったまま
 君のあの日を抱いている




 20100303