「記憶の緑に寄す」





 あの新芽に届くなら、と

 かつて 虹に似た鮮やかさで
 放物線を描きながら云った

 未熟な嘘を
 こぼしてしまわないよう
 青のにおいが
 あなたまで伝わらないよう

 腐葉土と名付けた約束に
 憧憬のなきがらを隠した

 端から饐えてゆく退路を
 どうすることもできなくなってから
 この手には種すら無いことに
 ようやく、ようやく気づいたのだ



 それでも
 違えられない道程は続く

 青くさい夢を吐いては
 こっそりと持ち帰る日々に
 錆びた指を絡ませながら祈る



 雨樋に溜るわずかばかりの希望よどうか、




 20100309