「レール」





 昨日を裂いて生まれた
 終わりも始まりも分からない
 白の延長線上にぼくらは立つ

 あらゆる温度はまだ
 目を覚ましていないから
 ここが同じ場所だと云える
 右手と左手が確かだと云える



 風の譜面が見えるね
 予想よりも複雑な音階で
 雀と烏を困らせながら
 ここまで降りてきて
 硝子戸を鳴らしているね

 むしろ違えてしまいたいね
 暮れて終わることは知っている
 永遠に続くと信じるよりも
 どこかで待つ交差のためになら
 縛られないで駈けてゆけるね



 夜明け前
 汚れずに溶けた白い息の行方を
 ぼくらは決して忘れないだろう





 20100428