「溢れませんように」





 手のひらを傷つけながら
 砕いてしまった日々の中で
 きみのためのオルゴオルは
 もう二度と鳴らさない

 狭い部屋だもの
 隅っこなんてなかったよ
 逃げる術なんて持たないよ

 絆創膏だらけの手のひらで
 砕けた日々を直しながら
 きみのためのオルゴオルを
 そっとどこかにしまう

 まずは音色を忘れて
 つぎにかたちを忘れて
 願わくはきみを忘れて

 最後に残った綺麗な色で
 蓋をしようと決めた





 20100503