「志望理由」





 この先へ進むには
 どうしても理由が必要らしい

 寧ろ問われる理由を知りたいよ

 そう云われるときみは
 すべてを食べてきたスプーンに
 逆さの笑顔をうつして誤魔化す

 だってそうだろう
 安っぽくて大切だった
 夢や希望っていう玩具
 持ち寄って遊ぶために
 理由なんて要らなかったろう

 理屈で汚れた解答用紙の端を
 ととのってしまった指先が
 酷く丁寧に伸ばしてゆく

 ぼくから云わせてもらおうか
 その仕草が屁理屈じみているって



 少しも変わらないはずだった
 きみの可愛らしい笑顔は
 スプーンを退けた後も
 なぜか歪んで見えてしまう

 それはとてもかなしいのに





 20100508