「あした咲く花」





 なにもかもを見上げていた頃

 浮いた、沈んだ、って
 繰り返す善し悪しの判断
 とじ込められたままなのに
 どうしてわかるのだろうと

 温度も色も鮮烈な最中
 ちいさな手指で触れる

 並べた未開の奇跡たちが
 たしかに息吹いてくれるまで
 おなじに息をとめてみたかった



 浮かんで、沈められて、
 いつしか曖昧な境目の上

 切り捨てられた奇跡の行方を
 もう憶えていられないほど
 あらゆる仕組みを叩き込まれ

 構わず拡げた双葉の向こうは
 自由という名の無秩序だった

 期待の匙加減もわかる
 息をとめれば途絶える
 だから仰いで前へ進む



 あした咲く花も知れないで
 なにを見上げられるというのか





 20100522