「もったいない」





 その本に綴られていたのは
 探していた正しさなんかじゃなくて
 どこか捻くれた顔の明朝体でした

 その端末に打ち込まれていたのは
 求めていた答えなんかじゃなくて
 真ん丸い愛想笑いのゴシック体でした



 ざらついた今日が匂いたつ夜

 抱えた本の結末を
 端末が示した返事を
 思い出を 溜め息を

 違うのになあ、違うのになあと
 順繰りに放り捨てることに
 夢中になっているものだから

 やさしく明日を誘う子守唄が
 すれ違う傘からこぼれていたとしても
 それを拾えないままなのです





 20100616