「トビウオ」





 一面の海原だったころ
 青を羽ばたいていられる、
 確かさだけで笑えていたんだっけ

 そうだ

 輝いているならいい
 陽でも星でもいいだろう、
 まぶしくなれないぼくらにとって
 少なくともあれらは尊かった

 へたくそに息を継ぐきみと
 全身で生きていられたんだ
 ぼくは全身で生きていた



 うまく溜息を吸い込みながら
 ぼくは失くしたひれを思う

 胸苦しさに見た空で
 うろこ雲がちぎれてゆく






 20100812