「曼珠沙華の頃」





 二度と語られない秘密を
 からだじゅうに纏って
 少しずつ諦めるまぶしさたちは
 眠りにも就かず死んでしまった

 幼い手が、目が、
 追いかけた光をおぼえている
 おぼえているだけだ

 漫画の折れ端に、遠すぎる雲間に、
 褪せた幼さは疲れたんだろう
 立ち止まって確かめるだけの暇も
 惜しむほどに焦っている

 あの頃のぼくたちに
 ただしさは要らなかった
 暗闇に降る星を見ていれば
 それで良かった



 いつも出逢うのに
 おやすみ、を云えない

 寂しさだけが証のようで
 なにも手放せないんだよ






 20100828