「氷菓子の行方」





 どうにかうまく滑り落ちて
 わたしは人知れず渇いてゆく
 ぬるまる温度を享受しながら
 すべてが旅立てる時を待っている



 透明な硝子の鋭利さを
 投げ渡して気づいたこと

 星が砕ける音だけでは
 切り傷の痛みも色も熱も
 乱反射していたなにもかも
 伝えられないこと



 うつくしい体裁を守ったまま
 あなたは溶けてしまえばいい
 切っ先を知らずにゆけるから

 幸せは瞬きの冷たさだったと
 わたしを掬うはずの腕で
 それだけを抱いてゆけるから






 20100908