「ためのうた」





 要るものと要らないものが
 世界にあふれ、あぶれ

 ひっくり返った屑籠のとなり
 大切、を見つけて抱き締めて笑う

 抜け出せないと思われる
 独り善がりの隙間から
 窮屈なブーツを脱ぎ棄てて
 裸足で触れた、根っこ

 誰かのためのうたなんて
 誰もうたっちゃくれないから
 必死で水を吸い上げて
 生きている、と彼はのたもうた



 あなたのためのうたなんて
 わたしにうたえはしないから
 利害の一致を良い方へと
 噛み砕いて呑み込むことにした






 20101001