「ひと、ひとり」





 ちょうど
 水溜りが青空を模すようにして

 雨水が攫っていった独りごとと
 目の前で晴れ渡る他人ごととが
 背中合わせに立ち竦んでいる

 あるいは
 転ぶのを恐れず後ろ歩きをすれば

 そのまま土に落ちて浸み込み
 背けずとも目を閉じて眠れる、
 とでも云うのだろうか



 同じ分類だけれども
 分かたれたいのち

 揮う、勢いの方角だって
 比べてみたくなるほど
 一瞬見紛うほどに別物だ



 掲げられた光から
 毒のような匂いがしても
 けして呑み込むことはない

 探し物はほかにあるはずだろう






 20101004