「レオニードの走馬灯」





 半端に肥えた月の夜

 たしかに宇宙はふたつ在った
 ただ、こちらはひと足早く飽和を知り
 押しつけの光が溢れ出しただけだった

 星も人もおんなじもので
 感傷を手渡せる距離に居ないのだから
 大層な演出でもって最期を謳い
 利己的に弔ってしまえばいい

 震えたくちびるの一瞬で
 鼓動が耳朶を這うより短く
 死んでゆく
 燃え尽きることを模倣してゆく



 ぼくは、まぶしい、を言訳にする

 どうせ宇宙の夢なのだと
 涙が月の頬を滑り落ちるあいだ
 思い出すべき温度たちは
 懲りもせずストロボしていた






 20101203