「嘘」





 くちびるを介したら
 奇麗な花が咲きました

 飲下した朝露のどこにも
 濁りなどなかったはずなのに
 いざ仰ぎ見た蕾はと云うと
 見事ひび割れていたのです

 咽喉はもはや草笛と化し
 ひゅうと実のない音で泣き
 細くなった呼気を糧に
 鬱蒼と巣食うものですから
 次の種など出来ぬよう
 何度も何度もたしなめます



 唾液を啜って
 舌根を潤ませて
 蜜のにおいが渇かない



 頬を彩る赤い影を
 睫毛の隙間から見上げては
 化粧臭い虚ろさの独り歩きだと
 咲いたくちびるは罵りました





 201102??