「とびら」





 跳ねた足踏み

 摩擦の音が消える代わり
 融けて滲みるあいうえお
 じわり熱を持つ額の奥

 まずは輪郭を預け
 隔たりをなくするために
 鍵穴へ人差し指を入れ
 親指で恐る恐るふれる
 生まれた輪に魅入る

 溢れ出た水を乾す
 同じぬくみになる

 耳朶のうしろがわ
 幾多も呼び声がする

 ようやく降りた踵から
 僅かずつ
 僅かずつ
 浸して



 わすれたまばたきの合間
 網膜を越えてここまで来た
 一寸の夢をおぼえているのなら

 わたしたちは確かに
 単位のない世界で息をした





 201102??