「手のひらの自由」
ぼくの手には
取るに足らないものばかり
拾って愛するための隙間がある
集めて抱き締めて綻ばせて
そのうち捨てたことも忘れて
違うだれかとなにかのあいだで
微かな確かな呼吸を続けている
小指の付け根を鬱血させてまで
欲しい幸せをぼくは知らないから
きみと繋いだって同じだった
ゆるく結んでいた約束はほどけたよ
どれだけ干乾びても
触れることができるなら
(きみの面影が言うように
石英の斜面が照らす方へ
幾筋も分かたれてゆきながら)
けっして埋まらないこの自由を
これからまた持て余す予定だ
20110209
←