「詩」





 くだらないことを書いているのです



 俯いた世界を見つめるため
 おんなじになって俯いて
 深く深く、抉ろうとした眼に
 見当違いの草原と昨日の夢が映り
 懐かしむ暇もなく薫りはじめたので
 それでもいいや、わざわざ声にして
 隙あらば飛んでくる言訳に蓋をして
 輝かしかったあれこれを取り出しながら
 逸る手指に引っ掛かってきた後悔も
 僅かばかり思い出してやりながら
 痛む胸の内をも編み込めたことに
 なぜか得意気になって
 ふんむ、と気合を入れ直し
 インク臭く真新しい辞書を開いては
 相応しいレタリングを探して
 だんだんと散らかってゆく部屋の隅で
 草臥れたぬいぐるみを見つけて
 手触りだけでは伝わらない温度に
 訳もなく溢れ出た涙を持て余して

 はて
 見つめるべき世界はどこへ遣ったろう、と
 明日の匂いの最中にようやく気づいて



 そう
 くだらないことばかり書いているのです





 20110211