「ほおずき」





 ただのふたつしかない手を差し伸べて
 ぼくは優しい人になろうとしている



 そうだね、

(橙と、溺れる手前の境目が怖い
 星が落ちてきやしないかって
 願う前に不安でしようがない
 痛いのが嫌いだから
 立つことも絶つこともできない
 めでたし、が信じられないから
 ぜんぶの物語は嘘つきだ)

 そうだよね、
 あなたはとても苦しんでいるね。



 ただのふたつしかない手を差し伸べれば
 求めていることにはならないって
 ひとりの優しい人になれるからって

 勝手にことわりを生んだ唇で
 ぼくは易しい言葉を投げつけようとしている





 20110224