「剪定」





 そっと鋏を入れることで
 つめたくなって落ちた春が
 みずみずしいまま横たわり

 まだ
 温度に逆らわず震える唇で

 哀しくないの、と
 しんしん泣いた

 祈るように



 捨て往かなければならないのだ

 自らの手で選び切り落として
 鋭利な傷口を覗き込むことで
 正体を知らなければならないのだ

 新しい温度のために流すことが
 たとえ間違っていたとしても
 この間引きはやがてただしくなる
 ただしく、かたちを成してしまう



 ただつめたいだけの長雨が
 匂い立つまま頬を打ち

 もう
 はなむけと化した声の上に

 哀しくないの、と
 しんしん重なる

 埋もれてゆく





 20110302