「葉桜」





 冬はとっくに眠りました
 桃色に見えるものは名残りです



 声帯と鼓膜と水晶体、
 それから心臓

 ありとあらゆる震えから
 意味を取り去ってしまったら
 肌寒さだけが残るでしょう
 上着を着れば大丈夫です

 忘れたことを忘れていたのに
 今更、もういちど、は要らない

 ただの、うつくしかった、で終わるために
 わたしは雑踏のひとつになる



 何の気なしに見上げても
 どうぞ気にせず過ぎていってね
 わたしはにどと、震えない





 20110420